こちらでは、アラビカ種(アラビカコーヒーノキ)についてご紹介します。
「アラビカ種」はロブスタ種(カネフォラ種) / リベリカ種と並ぶ、コーヒーの三大原種のひとつ。
正式名称(学名)は「Coffea arabica」で、アカネ科の植物です。
アラビカ種はコーヒー全体の生産量の60~70%を占めており、200種類以上の品種があります。
ここでは、アラビカ種の原産地・生産地・種類(品種)・歴史・味や香りの特徴・ロブスタ種(カネフォラ種)との違い・おすすめの飲み方などについてご紹介します。
アラビカ種「原産地」
アラビカ種の原産地は、東アフリカにあるエチオピアです。
アラビカ種「生産地」(生産量ランキング)
アラビカ種の生産地は原産地のエチオピア以外にもブラジル、コロンビア、ホンジュラス、ベルー、メキシコなど様々な国で生産されています。
USDA(米国農務省)の公開している2023/2024年の「アラビカ種の生産量」によると、
1位:ブラジル … 44,900千袋
2位:コロンビア … 12,760千袋
3位:エチオピア … 8,600千袋
4位:ホンジュラス … 5,000千袋
5位:ペルー … 4,000千袋
6位:メキシコ … 3,320千袋
7位:グアテマラ … 3,300千袋
8位:ニカラグア … 2,200千袋
9位:中国 … 1,800千袋
10位:インド … 1,480千袋
11位:インドネシア … 1,350千袋
12位:コスタリカ … 1,100千袋
13位:ベトナム … 1,000千袋
14位:ウガンダ … 1,000千袋
15位:パプアニューギニア … 930千袋
上記のような生産量ランキングとなっているようです。
アラビカ種「種類」(品種)
アラビカ種のコーヒー銘柄としては、
『エメラルドマウンテン』(コロンビア)
『キリマンジャロ』(タンザニア)
『トラジャ』(インドネシア)
『ブルーマウンテン』(ジャマイカ)
『マンデリン』(インドネシア)
『モカマタリ』(イエメン)
『モンスーン』(インド)
などが有名で、カフェなどでも目にすることが多いのではないでしょうか。
アラビカ種には200種類以上の品種があるとされていますが、
『ティピカ』(Typica)
アラビカ種の中で最も原種に近い品種。
コーヒーさび病に弱いため生産性が低いとされ、現在では単一品種で流通しているものは少ない。
『ブルボン』(Bourbon)
ティピカの突然変異で生まれた品種。
ブラジルのコーヒーの原型とされている。
『カトゥーラ』(Caturra)
ブルボンの突然変異で生まれた品種。
コーヒーさび病に強く、ティピカやブルボンよりも生産性が高いとされている。
『ムンド・ノーボ』(Mundo Nove)
ティピカとブルボンの自然交配種。
病害虫への耐性が強く、生産性が高い。
『カトゥアイ』(Catuai)
ブラジルで生まれた、カトゥーラとムンド・ノーボの交配種。
病害虫への耐性が強く、生産性が高い。
『マラゴジッペ』(Maragogype)
ティピカの突然変異種。
大粒の豆が特徴。
『ケント』(kent)
インドの品種で、ティピカとその他の雑種とされる。
コーヒーさび病に強く、生産性が高い。
『アマレロ』(Amarello)
ブルボンの突然変異種。
コーヒーの実は熟すると一般的には赤くなるが、黄色くなるのが特徴。
などが主なアラビカ種の品種になります。
アラビカ種「歴史」
アラビカ種の歴史は非常に古く、元々はエチオピアで自生していたのを発見されたのが始まりと言われています。
発見したのは「ヤギ飼いカルディ」という説がありますが、あくまでも伝説ということで特に明確な根拠はないようです。
エチオピアでは食用とされていたようですが、エチオピアからアラビア半島のイエメンに伝わり、13世紀頃からは焙煎され飲用されるようになったと言われています。
そして17世紀にはイエメンからスリランカやインドに持ち出され、その後インドからジャワ島(インドネシア)へアラビカ種の挿し木が運ばれ栽培に成功し、量産化されました。
18世紀に入り、ジャワ島(インドネシア)からアムステルダム植物園(オランダ)へのアラビカ種の苗木の移植に成功。
アムステルダム植物園のアラビカ種の苗木が当時のオランダ市長からフランスのルイ14世に寄贈され、フランス領ギアナでも栽培が開始されました。
後にギアナからは、現在は生産量世界一のコーヒー大国となっているブラジルへアラビカ種の苗木が持ち出されます。
19世紀には、ブラジルからハワイへとアラビカ種の苗木が持ち込まれました。
また、アラビカ種は病気や害虫に弱い品種としても知られていますが、かつてコーヒーの生産地だったスリランカでは19世紀にコーヒーさび病が広がり、コーヒー産業が壊滅的な打撃を受けたという歴史もあるようです。
アラビカ種「ロブスタ種(カネフォラ種)との違い」
アラビカ種はロブスタ種(カネフォラ種) / リベリカ種と並ぶコーヒーの三大原種。
リベリカ種は限られた地域でしか生産されておらず世界全体のコーヒー豆における生産比率(割合)は1%以下のため、一般的に流通しているコーヒー豆の約99%はアラビカ種とロブスタ種(カネフォラ種)で、アラビカ種はその中でも60~70%の生産比率(割合)を占めています。
アラビカ種 / ロブスタ種(カネフォラ種) / リベリカ種の違いとしては、
■ 生産比率(割合)の違い
アラビカ種:全体の60~70%程度
ロブスタ種:全体の30~40%程度
リベリカ種:全体の1%以下
■ 原産地の違い
アラビカ種:エチオピア
ロブスタ種:コンゴ
リベリカ種:リベリア
■ 生産地の違い
アラビカ種:ブラジル、コロンビア、エチオピア、ホンジュラス、ベルー、グアテマラなど
ロブスタ種:ベトナム、ブラジル、インドネシア、ウガンダ、インド、マレーシアなど
リベリカ種:フィリピン、マレーシア、リベリアなど
■ 栽培エリア(標高)の違い
アラビカ種:高地(標高1000m以上)での栽培に適している
ロブスタ種:低地(標高1000m以下)での栽培に適している
リベリカ種:平地(標高200m以下)でも栽培できる
■ 豆の形の違い
アラビカ種:平たい楕円形
ロブスタ種:アラビカ種よりも丸い
リベリカ種:菱形
■ 風味などの特徴の違い
アラビカ種:フルーティーな強めの酸味と甘い香り
ロブスタ種:しっかりとした苦味、酸味は弱め、麦の焦げたような香り
リベリカ種:苦味強め、酸味は弱め、独特のスパイシーな香り
■ カフェイン含有量の違い
アラビカ種:約1% (少ない)
ロブスタ種:約2% (アラビカ種の約2倍)
リベリカ種:アラビカ種とロブスタ種の中程度
■ 病気・害虫などへの耐性の違い
アラビカ種:病気(コーヒーさび病など)・害虫などに弱い
ロブスタ種:病気・害虫などに強く、コーヒーさび病への耐性が強い
リベリカ種:病気・害虫などに強いが、コーヒーさび病への耐性は弱い
■ 主な用途の違い
アラビカ種:高品質なレギュラーコーヒー、スペシャルティコーヒーなど
ロブスタ種:缶コーヒー、インスタントコーヒー、エスプレッソなど
リベリカ種:限られた市場のみで流通 (生産量が限られるため)
上記のような違いが挙げられます。
アラビカ種「地球温暖化による気候変動で絶滅?」
イギリスの王立植物園「キューガーデン」が発表した研究結果によると、アラビカ種は地球温暖化による気候変動で2080年までに絶滅する恐れがあるそうです。
キューガーデンの研究チームが最新のコンピューターモデリング技術を使ってシュミレーションした結果、124種のアラビカ種の124品種のうち75品種は絶滅の危機に陥っているのだとか。
地球温暖化による気候変動の影響で栽培に適した地域が減少していくことにより絶滅する恐れがあるということのようですが、アラビカ種は病害虫に弱く栽培に適した地域が限られるため、特に影響を受けやすいようです。
アラビカ種は世界全体のコーヒー生産量の60~70%を占めているので、もしアラビカ種が絶滅ということになるとコーヒー業界にとって大打撃となることはほぼ間違いありません。
国家レベルでは二酸化酸素排出量の削減(2015年・パリ協定)など気候変動を阻止するための取り組みなどもおこなわれていますが、コーヒー業界でも大手企業を中心に、病害虫に強いアラビカ種の新種開発などが進められているようです。
アラビカ種「味や香りの特徴」
アラビカ種と言っても様々な種類があり、それぞれに味や香りの特徴も異なります。
アラビカ種の主な銘柄の特徴としては、
■ エメラルドマウンテン
チョコレートのような甘味とたとえられることも多い、トロピカルで濃厚な甘さ。
柑橘系のフルーティーな酸味とマイルドで深いコク、そしてそのバランスも特徴です。
香りは、花のように華やかで芳醇な香りが特徴です。
■ キリマンジャロ
味の特徴は、強めの酸味と深めのコクとなっています。
柑橘系のフルーティーで甘い香りも特徴です。
■ ブルーマウンテン
香りが強く、苦み・酸味・甘み・コクの絶妙なバランス。
上品な香りと、まろやかな酸味になめらかなのどごしで、しっかりとした味わい。
飲み終わると、口の中にはほのかに甘味が残るのも特徴です。
■ マンデリン
苦みとコクが強く、酸味は少なめで、シナモンハーブのような香りが特徴。
日本人にもなじみやすい舌触りのため、日本人にもファンの多いコーヒーです。
■ モカマタリ
”赤ワインのような香り” ”フルーツが熟れすぎた香り” などと表現される、独特な甘い香り。
味はフルーティーな酸味が特徴で、チョコレートのような甘さも感じられます。
アラビカ種「おすすめの飲み方」
アラビカ種のコーヒーは様々な種類があり味や香りの特徴も異なるため一概には言えませんが、それぞれの特徴を楽しめる、ブラック(砂糖やミルクを加えない)の状態で飲むのがおすすめの飲み方だと思います。